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  • 独禁政策研究提言
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内閣府が募集していた「独占禁止法審査手続に関する論点整理」への意見を提出しました

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内閣府が募集していた「独占禁止法審査手続に関する論点整理」に、当協会会長 伊従寛が意見を提出しました。

内閣府 独占禁止法審査手続検討室 御中
2014年7月11日
競争法研究協会
会長 伊従 寛

  当研究協会は、自由私企業制度の下で「営業の自由」を基盤とする独占禁止法を中心とした競争法の民間研究機関であり、有力企業を会員として運営され、適宜、政策提言をしてきているが、平成17年の独占禁止法改正以来、とくに独占禁止法の執行手続について数回にわたって政策提言を行ってきており、平成20年8月には当研究協会内に学識経験者による独禁法手続問題研究会(座長松下満雄東大名誉教授)を設置し、同年10月には報告書を公表している。今回、内閣府の「独占禁止法審査手続についての懇談会」の「論点整理」のパブリックコメントの意見募集に対して、以下の意見をまとめたので是非ご検討いただきたい。
 
目次
Ⅰ 懇談会の「論点整理」の2「基本的な考え方」に関する意見 1
1.独禁法違反事件が複雑で流動的な経済実態の中で規制されていること 1
2.企業は独禁法関係のリスク管理のために弁護士の助言が必要不可欠であること 2
3.「実態解明機能の確保」には多角的な視点による審査が必要で、一方的な審査権行使は不適当であること 4
(1)複雑で流動的な経済実態の解明のためには一方的な審査権行使は不適当であること 4
(2)「実態解明」のためには手続当事者間の「対話」が必要であること 6
(3)適正な審査権及び適正な弁護権のそれぞれの境界線を明確にすること 7
(4)「審査手続における公正性と透明性」は手続当事者間の「対話」の問題であること 8
(5)「実態解明機能の確保」のためには審査手続の公正化が必要であること 8
4.独禁法違反事件と刑事事件・行政事件との関係では、その相異点に留意すること 9
5.参考にすべき外国法は、米国とEUの独禁法執行手続であること 9
(1)米国の独禁法執行手続では、審査権と聴聞権・弁護権の保護が基本であること 10
(2)EUの独禁法執行手続では、審査権と聴聞権・弁護権の保護が基本であること 10
(3)米国独禁法執行手続の基本原則は手続当事者間の「対話」であること 10
(4)平成25年改正法の国会審議では、事前聴聞制度の導入が明確にされたこと 11
6.行政調査手続の適正性及び透明性の確保の点から手続マニュアルの公表が重要であること 12
7.審査官手持ち資料の全面的開示が弁護権として重要であること 12
8.その他の関連する事項 13
(1)独禁法執行手続についてグローバルスタンダードが成立していること 13
(2)「審査手続における公正性」の基本は「対話」であること 15
(3)「審査手続の公正性と透明性」の確保には詳細な手続規則の公表が必要であること 16
(4)独禁法の判例法的性格を尊重する必要があること 16
(5)「対話」の考え方に基づき同意命令手続を検討すること 16
(6)違反事件関係の資料の手続当事者以外の第三者への開示を禁止すること 17
(7)審査中の審査内容の秘密は厳守される必要があること 17
(8)リニエンシー制度の運用に関する若干の問題点 18
Ⅱ 「論点整理」の3の個別「論点」に関する意見 18
1.個別の「論点」に関する基本的な考え方 18
2.立入検査の限定 19
(1)立入検査は企業活動の重要な制限であり、適正な範囲に限定されるべきこと 19
(2)「実況見分」は「差押え」ではないので、「実況見分」に限定すること 19
(3)資料提出命令による資料提出には一定の期間の余裕が必要であること 20
(4)立入検査においては原則として任意の調査は行わないこと 20
3.具体的な被疑事実の告知・立入検査時の弁護士の立会い等 20
(1)被疑事実の具体的な告知が必要であること 20
(2)立入検査は強力な強制的審査権の一方的な行使であり弁護士の同伴は必要であること 20
4.弁護士・依頼者間秘匿特権 21
5.自己負罪拒否特権 22
6.供述調書・弁護士の立会い・調書のコピー提供 22
(1)供述調書の任意性については十分な検討が必要であること 22
(2)密室での取調べには弁護士の立会いが必要であること 23
(3)誘導尋問の防止策を検討する必要があること 23
①審査官の質問を調書に記載すること 23
②取調べについて録音器による録音を認めること 24
(4)供述調書の写しを供述人に提供すること 24
(5)供述調書に対して供述人の訂正を認めること 25
7.関連資料・経済資料等から客観的に推認する立証方法を推進すること 25

 
内閣府懇談会の「独禁法審査手続の論点整理」に関する意見

2014年7月11日
競争法研究協会

Ⅰ 懇談会の「論点整理」の2「基本的な考え方」に関する意見

1.独禁法違反事件が複雑で流動的な経済実態の中で規制されていること

 独禁法審査手続の検討に当っては、審査の対象である独禁法違反事件が複雑な経済実態の中で行われていることを十分に認識することが重要である。独禁法は自由な市場における競争制限行為を規制して競争を促進する法律であるが、現実の事業者間の競争は複雑な経済実態の中で対立と協調とが混在し、企業活動は競争を促進する側面と競争を制限する側面とを併せもっている。今回の独禁法改正問題の国会審議において改正問題担当の稲田朋美国務大臣は、平成25年11月20日の衆議院経済産業委員会で「日本の経済情勢はグローバル化の中で非常に複雑化しておりまして」と述べ(議事録16頁)、本法改正に関する国会付帯決議は、「独禁法違反事件が複雑な経済事案を対象とする専門性の高いもの」と記載し(決議第1項)、公取委も「独禁法違反事件は、複雑な経済事案を対象とし、経済と法律の融合した分野における専門性の高いもの」としている(「改正法の概要」1(2)②:公取委HP)。
 この複雑な経済情勢は、情報技術革新の進行、経済のグローバル化、政府規制緩和などを通して行われ、極めて流動的であって経済実態はますます複雑かつ流動的に展開されており、独禁法違反の判断は多角的な視点から行われる必要があり、その規制内容も時代により大幅に変化してきている。例えば、競争業者間の大企業の合併や株式持合(M&A)は、1960年代の独禁法運用では市場シェア基準により画一的に厳しく規制されていたが、80年代になるとこの市場シェア基準は審査開始の一指標になり、実質的な判断は規模の利益・財務の改善・技術開発の状況・潜在競争者の状況(市場参入の難易)などが広く勘案され、競争制限効果と競争促進効果とが比較衡量され、概念的・一方的な規制ではなく経済的・多角的な評価により規制する状況に変化してきている。業務提携協定・技術提供協定なども同様である。パテント・プールは以前には独占を特許権利用により強固にするものして最も悪質な独禁法違反行為とされていたが、現在では複雑・錯綜する特許権紛争による特許権利行使の阻害を解消する方法として基本的に合法とされている。最近50年間のこのような独禁法規制の大きな変化について先導的役割を果たしたのは米国独禁法であるが、この大変化は何よりも米国独禁法が具体的な違反事件に関する市場の経済実態に沿った運用により、具体的には判例法によっておこなわれたものであって、法改正によってではないのである。米国独禁法は、市場経済の大きな流れに即してその時々の弊害(競争制限行為)を違反事件を通して裁判所の判例により規制するという仕組みが優れており、これによって市場経済の基本法としての役割を果たしている。この点からみて、独禁法執行手続の重要性が明らかである。すなわち、この50年間の米国独禁法規制の大きな変革は、法改正ではなく、個別事件に対する執行機関の審決と裁判所の判例を通して行われている。以上の企業提携に関する規制の変革は、独禁法の執行手続の在り方と深く関係している。「裸の価格協定」については、競争者が競争上重要な対価を一律に固定するので独禁法上「原則違法」の考えが採られ、現在でもその考え方は維持されているが、それでもこの原則違法が適用される範囲や立証方法は変化してきている。原料の高騰などにより価格を引き上げる場合、引上げの必要性について競争者は一致しているが、いくらに値上げするかは各社によって異なり対立する場合が少なくない。新たに新鋭設備を導入した企業は設備の回転率を高めるため低い値上げを望み、既存設備を所有しシェアの高い企業は高めの値上げを望み、値上げ水準について各社により異なり利害は複雑に対立する側面があり、価格協定の違法な合意の存在を認定する場合には、価格に関する合意の内容・意図・具体的な情報交換の状況などの十分な分析・調査が必要となってきている。同業者の間でもリニエンシー制度を利用する者がかなり多いし、需要業者は専門的視点から人為的な値上げや価格維持については極めて敏感で、その情報を規制当局に提供するのである。
このような複雑で流動的な経済実態の下での独禁法の運用においては、この変化に適した執行手続が重要な役割を果たしている。独禁法は、大きな市場経済の流れに即しつつ、その時々の弊害(競争制限行為)を適切に規制するため、個別の違反事件を通してそれを実現する法律であり、一定の固定的な違反行為を前提に規制する一般の経済規制法とは異なっている。独禁法違反事件は複雑で流動的な経済実態の中で個別事件に対する法の適用により執行機関の審決や裁判所の判決を通して行われている。したがって、独禁法違反に対する審査活動としては一方的な視点からの審査は適当でなく、この複雑で流動的な市場の経済実態の実態解明に適した多角的な視点からの審査が必要である。そして、そのためには、審査を受ける事業者やその職員などは複雑な経済実態を十分に規制官庁に主張することが重要である。この場合企業側の職員は抽象的な独禁法の規制規定の適用に関する十分な知識が乏しいのであるから、弁護士の助言によって的確に審査官の質問に応じることが必要であり、このことは弁護士の助言が単に関係事業者の防御権の問題としてだけでなく、弁護士の助言に基づく正確な経済実態の供述が事件の複雑な経済実態の解明と適正な法適用に役立つのである。


2.企業は独禁法関係のリスク管理のために弁護士の助言が必要不可欠であること
懇談会の「論点整理」の2「基本的な考え方」(1)は、「事件関係人の十分な防御の確保」の問題を検討している。上述のように独禁法違反事件が複雑で流動的な経済と法律の融合物であり専門性の高いものであることに着目すると、また独禁法の禁止規定が極めて抽象的でその実際の規制内容は審判決などを精査しないと把握が困難であることを考慮すると、独禁法の知見に疎い企業側職員が専門的な審査官の審査対象になる場合に専門の弁護士の助言を受けることが必要である。現在殆どの企業は、独禁法遵守マニュアルを作成し、職員の行動指針としているが、このマニュアルの作成には弁護士の助言が必要であり、殆どの企業はそれを行っており、公取委もそれを奨励している。独禁法遵守は、企業のリスク管理としても必要不可欠である。現在、企業は極めて複雑で錯綜した経済・社会の中で活動しており、企業環境は多種多様なリスクに直面しており、その中で独禁法のリスクも大きいのである。独禁法は「営業の自由」を保障し、市場経済の基本法であるが、現実には規制規定が抽象的で極めて難解な法律であり、違反被疑事件が起これば、審査を受けること自体で企業活動は重大な打撃を受け、名声は傷つけられ、違反となれば高額の課徴金のほか、株主代表訴訟、損害賠償訴訟など様々な不利益が加重されることになり、企業にとっては最もリスクの高い法律である。企業は日常から独禁法遵守プログラムを作り、独禁法を習得し、弁護士の助言を受けて、リスク・マネージメントを行っている。公取委自身が企業のこのリスク・マネージメントと専門家の助言の必要性を十分知っており、独禁法に関する相談に応じて助言を行う組織(相談室)を設置して相談事例も公表されている。
 企業が独禁法違反容疑で審査を受けた場合に専門家の助言の必要性はより高まる。とくに審査官の立入検査、事情聴取のための呼出しを受けた場合などには、この助言の必要性が高い。独禁法違反事件が複雑な経済と難解な法律問題の融合物である点を考えれば、このことは明らかであり、専門家の助言なしに行動することはリスクが大きく適切ではない。違反事件の審査が行われた場合には、公取委の相談室を利用することはできないので、企業は専門の弁護士に相談し助言を求める以外に方法はない。審査段階で最も助言を必要とする企業とその職員が立入検査や事情聴取などの審査を受ける場合に、十分な弁護士の助言が排除されることはこの点から言って問題であり、不適切である。
また、独禁法違反事件の対象が経済と法律の複雑な融合物であるから、審査官が違反事件審査について当初の疑いに固執して一方的に審査を進めることは不適当であり、当該市場の競争の状況について、審査の進行に伴って、多角的視点から客観的に分析し、複雑で流動的な経済実態における企業行動の実態を正しく把握することが必要である。審査官の審査は、委員会の決定を受けて行われるため、審査官はその決定を根拠に違反被疑事件について一方的な証拠集めを行う傾向があるが、これは複雑な経済実態を背景にした事件調査としては適切ではなく、企業側の視点から見た経済実態も考慮して多角的な視点から審査をする必要があり、このためには企業側が弁護士の助言を受けて企業側からみた経済実態を十分に説明できるようにして、一方的な審査を抑制し多角的な視点からの適正な審査が行われるようにする必要がある。また、関係企業は同業者であると同時に競争者であり、市場参加者は異なる価値判断の下に対立と協調の中で競争しており、同業の企業側も様々な異なる見解と市場評価を持っていることにも十分の考慮が行われるべきである。企業側の弁護権の必要性は、この審査権行使の在り方と密接に関係し、弁護士の助力は審査官の一方的な審査権行使やそれに基づく誘導尋問などの不適法な権限行使を抑制・防止する機能を持ち、適切な弁護士の助言による審査は多角的な視点からの複雑な実態解明を助長するのである。
 この点で適切な審査と適切な弁護権は相互補完的であり、矛盾するものではなく、問題は両者とも適切な範囲を超えて権利が濫用される場合を適切に防止することである。以上の2つの側面は、複雑で流動的な経済実態に対応して独禁法を多角的な視点から適正に運用するために相互に関連しており、それは最近のこの経済の複雑化の急激な進展によりますます重要になってきている。複雑で絶えず変動する市場経済の中で独禁法を運用する場合に、まずこの運用の中核になる審査官が強制審査権を含む審査権を持つ必要があることは当然であるが、その審査権の行使は一方的に行われるのではなく、多角的な視点に立って適正に行使される必要があり、この審査官の審査権行使に対応して企業側は抽象的な独禁法の具体的な規制事情には疎いのであるから適切な弁護士の助言・弁護権が必要であり、かつ審査官と弁護士との間にその役割についての相互理解と信頼関係が必要であり、両者間で十分な「対話と意見交換」ができることが重要である。


3.「実態解明機能の確保」には多角的な視点による審査が必要で、一方的な審査権行使は不適当であること
(1)複雑で流動的な経済実態の解明のためには一方的な審査権行使は不適当であること
   懇談会の「論点整理」の2「基本的な考え方」(2)は、「実態解明機能の確保」の問題を検討している。ここでは、「企業側の防御権の強化が公取委の実態解明機能を制限するおそれ」の観点が強すぎるように思われる。この問題を検討するためには、まず「実態解明」が審査官の強制的審査により行われているので、審査官によるこの実態解明が実際にどのように行われているかを把握する必要がある。独禁法違反事件の審査は、審査局が申告その他によって違反事件の端緒に接した場合、極秘裏でその端緒となった事実を検討し、違反の疑いがあると思料する場合には、問題点を整理した被疑事実を委員会で審議しその事実が了承されると違反被疑事件として決定され(立件という)、審査が開始される。通常、まず有力な関係事業者の営業施設を綿密に調査して把握した後、数十人の審査官が朝9時ごろに一斉に各社の営業所に立入検査を行ない、それは夕方まで継続し、その場で膨大な書類に対して提出命令が出され、企業側はその書類のコピーを取る余裕もなくその場で提出させられ、通常それは1社当たり数十の段ボール箱に詰められて運び去られる。立入検査が実施されるとそれは大きくマスコミで報道される。これによって、被疑事実は一段と固められ、世間もこのマスコミの報道により被疑事実に対して違反の認識を持つようになり、関係企業の活動は被疑段階の初期において相当の被害を受ける。その後審査官は有力資料を分析し被疑事実との関連性を検討したうえで、関係職員を公取委に呼出し、関係人は一人一人単独で審査局内の密室で、通常複数の審査官から質問を受け、それに答えることになる。会社の文書管理や経営管理などについてはかなり客観的に質問されるが、違反事実関係についてはすでに固められた被疑事実を基礎に関係資料との関係を含めて一方的な視点からの質問をし、それに答える形で事情聴取が進められ、若干の時間の待ち時間のうちに供述内容はその場でまとめられ、その内容を読み聞かされ、若干の訂正の後、これは任意に供述したものであると書かれた供述調書に署名押印して、供述調書が作られる。通常1社当たり数十本の供述調書が作成される。供述調書のコピーは提供を求めても拒否され、供述中のメモを取ることも禁止されている。その後追加の立入検査や資料提出命令、報告命令書が送付されることがある。この審査は立入検査から約1年程度で終わる。この間審査は最初の被疑事項に沿って審査官の一方的な視点から進められる。会社の内部組織などについては会社側の説明を良く聞き必要な裏付け資料の提出が求められる。この間審査官が被疑事実に関して何を考えているかは全く知らされず、審査は一方的に進められる。被疑事実等の告知書には事件名(事業者又は団体の名前)と違反行為類型と適用法条が記載されているだけである。その後の審査官の審査は、当初の被疑事実を根拠にして、そのための証拠集めの傾向が強く、経済実態の解明という多角的な視点からの客観的な審査ではないのである。審査が終了すると、最後に排除措置命令案が送付され1日だけその説明があり、意見陳述と証拠提出の機会が与えられ、この時には審査官側の証拠の一部も見せられるが(法49条4項・5項)。極めて形式的であり、それは相手方に一応の弁明の機会が与えるに過ぎず、数週間後には正式の排除措置命令と課徴金納付命令が出される。この場合にも新聞で正式違反事件として課徴金を含めて大きく報道される。その後、企業側は、事後審判を請求することができるが(49条6項)、そこでは審査官が公益的な見地から与えられた強制的審査権により収集した資料について、被審人側には利用させず、審査官が違反のために役立つ資料を一方的に選択して黒の証拠として提出し、それを中心に審議が行われ、結局最も重要な違反事実については、たとえその事実について証人による宣誓陳述が行われても、結局は供述調書が任意に供述され本人が署名押印しているから調書のほうが信憑性が高いという理由で供述調書が優先して採用され、違反との結論が出されるのが通常である。このような一方的な審査活動の下では複雑な経済実態に即した独禁法規制は行われ難いのである。

 米国及びEUにおいては、審査手続の公正性と透明性の確保の見地から企業側に各種弁護権を与えて一方的な審査権行使を抑制し、複眼的・多元的な視点からの客観的な実態把握がしやすいようにしているほか、審査の節目ごとに違反被疑事実の情報を開示し、審査側と企業側の「対話の討議」の機会が設けられ企業は審査局のトップまで会って対話をすることが認められている。処分案について争う場合には、その冒頭において審査官手持ち資料の全面的開示が認められその資料を反対証拠として利用することが認められ、複数の視点からの客観的な実態把握ができるようにしている。我が国の場合、審査段階で企業が審査官に対話を求めても通常拒否される。

(2)「実態解明」のためには手続当事者間の「対話」が必要であること
違反事件審査の端緒に過ぎない当初の被疑事実を根拠に審査官が一方的な審査権行使をするとすれば、このことは現在の複雑な経済情勢を背景とした独禁法違反事件の実態解明について根本的な欠陥となる。当初の被疑事実は単なる疑いの事実であるに過ぎないから、その後の審査は相手方事業者の主張を聞きつつ、複眼的・多角的な見地から違反被疑事件の解明を客観的に行う必要があり、このことが経済実態を正しく把握するのに必要不可欠である。審査手続における企業側の防御権の問題は、審査官の一方的な審査権行使を抑制するものであり、それにより企業側から見た経済実態の実情を適切に主張するためのものであるので、弁護権は「実態解明機能も確保」に貢献するものであり、問題はむしろ審査権の一方的な行使の抑制と多角的な視点からの審査の確保・促進である。「実態解明機能」は、基本的に審査官の強制的審査権の行使を通して行われているので、まずこの審査官の審査権の行使が現実にどのように行われているかを把握し、それが複雑な経済実態に解明に適切か否かが検討される必要がある。
違反事件の実態解明のために、独禁法に基づき審査官は強制的審査権が与えられ(独禁法47条)、その行使は実態解明のために必要不可欠であるが、本来この権限の行使は必要最小限度に行われるべきものであり、対象事案によってその範囲は異なるものの、そこに適正な審査権行使のための制限があり、不適正な権限行使は許されていない。例えば、誘導尋問などは不適正で制限される必要があり、このような不正手段による一方的な審査は決して実態解明に役立つものではない。むしろ、事業者が弁護士の助言を得て経済実態について適切に主張し答弁して両者間で「対話」ができるようにすることが、審査官の一方的な審査権の行使が抑制され補完されて、多角的な視点から複雑な経済実態の客観的な把握がきるようになり実態解明に寄与すると考えられる。企業の弁護権は、審査権の不正な行使に対する防御対策という側面があり、審査官の一方的な審査権行使を抑制し、むしろ手続当事者間の「対話」を促進し、適切な実態解明に寄与するのである。
適正な審査権と適正な弁護権は、相互に矛盾するものではなく、いずれも当事者間の「対話」を促進し違反事件の適切な実態解明に寄与するのであり、問題は不適正な審査権行使や不適正な弁護権行使が実態解明を阻害するのであって、両者の権利行使の方法ないし範囲の制限が重要である。すなわち、事件の実態解明には、審査権と弁護権の適正な行使(不正行使の制限)が必要で権利の有無よりはそれぞれの権利の行使の限界線が重要である。企業の審査権行使の濫用に対する防御権として弁護権が認められても、その行使が正当な防御権としてではなく適正な審査権行使を妨害することに用いることはできない。現在の複雑な経済実態の解明には、一方的な審査権の行使は不適当であって、当事者間の「対話」を中心とし、複眼的・多角的な視点からの適正な審査が必要であり、このためには事業者側が弁護士の助言を得て審査官の質問に対応して当該事業者側の状況について的確な主張が十分できるようにすることが必要である。

(3)適正な審査権及び適正な弁護権のそれぞれの境界線を明確にすること
適正な審査権と適正な弁護権については、相互関係が存在している。したがって、適正な審査権と不適正な審査権行使の境界線又は擁護すべき適正な弁護権の行使の範囲を適切に仕分けて明確にすることが必要である。この場合、審査権(又は弁護権)行使の内容・方法等について白・黒・灰色に分類し、灰色の場合にはケースバイケースで具体的な案件について判断し、それが当事者間で解決できない場合には公取委の中の中立的な部門(例えば聴聞官・手続管理官)が裁定し、それに不満のある場合には裁判所が決定する方法が適切である。
 米国及びEUでは弁護権は規制官庁の強制的審査権に対応するものとして認められているが、審査権及び弁護権の双方の限界がそれぞれ明確にされている。この境界線の確認は、争いがあれば最終的には裁判所で判定するほど重要であり、それをしないで弁護権そのものを排除することは不適正である。弁護権の問題は一律的に黒か白かの権利の問題ではなくその行使が適正か否かという現実の問題である。
米国では、立入検査権は司法省が「裸の価格協定」など「当然違法の原則」が適用される行為類型の刑事事件審査の場合に限定され、司法省の民事手続では認められていないし、FTC審査手続においても認められていない。強制的審査権の行使は、それが認められる場合であっても、基本的に必要最小限度であり、限度を超える不適正な審査権行使は認められていないのである。
米国で刑事事件について立入検査が認められる場合においても、大陪審で関係者からの事情聴取の後に立入検査が許容され、したがって、予告なしの「暁の襲撃」(dawn raid)はないのである。すなわち、それぞれの国において審査権の行使は必要最小限度という制限があり、立入検査権以外の証言録取のための出頭命令(サピーナ)などの場合でも適正な限度を超える場合は制限されており、企業側の弁護権はこれに対応する側面をもっている。
 適正な審査権と適正な弁護権は、それぞれ複雑な経済実態と関連する独禁法違反事件の審査のために重要であり、企業の弁護士助言制度は審査権の一方的な不適正行使を抑制する機能を持つと同時に、複雑な経済実態を解明するために必要不可欠な多様な視点からの適正審査を促進にする機能ももっている。
我が国では弁護士の役割がまだ一般によく理解されず、弁護士というと争い事の請負人としての認識があり、武装した付添人のように考える人もいるが、弁護士は複雑な問題についての専門的知見に基づく助言者・代弁者に過ぎないのであり、特別な権限をもっているわけではない。専門的知見の提供とその方法が不適正な場合には弁護士倫理規範等により制限されている。審査段階においても、弁護士の助言活動は、審査官と弁護士の間の「対話と議論」を円滑にするための役割を持つものであり、それを制限することは適切ではなく、適正な審査活動を阻害するなど濫用行為がある場合にそれを制限することが必要である。

(4)「審査手続における公正性と透明性」は手続当事者間の「対話」の問題であること
   適正な審査権と適正な弁護権の問題は、いわば現象的な側面からみた問題であり、この問題は基本的には「審査手続における公正性と透明性」の問題である。情報産業技術の進展と経済のグローバル化により経済の複雑性が加速する中で、独禁法の重要性が増大し、米国及びEUでは1990年代半ばから独禁法違反に対する制裁金は急激に高額化したが、これに対してEU内の産業界ではEUの独禁法執行手続に対する批判が増大した。このような背景の下で、OECD競争政策委員会は2009年から4年間「執行手続における公正性と透明性」を詳細に検討し、2012年4月に最終報告書を公表したが、この間2回に分けて中間報告書を公表している。この検討においてOECDの産業界の諮問委員会である経済産業諮問委員会(BIAC)は、最も望ましい執行手続は違反事件の訴追機能と審理・判断機能を完全に分離し、前者を行政機関、後者を裁判所が担当し、裁判所が最終行政処分をすることであるが(米国司法省反トラスト局型)、それが無理で担当行政機関が両機能を併せもつ場合には両機能を行政機関内部で完全に分離し、審理・判断機能はその行政機関から独立性を持った者が担当し、かつ処分後には裁判所の十分な司法審査に服すようにする必要がある(米国FTC型)との意見が述べられた(BIACの意見はOECDの2つの中間報告書に含まれ、OECDのHPで入手できる)。EUでは2011年10月にFTC型の「ベストプラクティス告示」を設定したが、その内容は米国FTCと同様の手続であり、審査手続においては適正な審査手続きは認めるが、企業側の各種弁護権を認め、審査官の審査権限の一方的行使を排除し、審査側と関係企業側の間で頻繁な会合を開き(対話)、審査側はできるだけその時点の審査関係情報を開示し、「対話と討議」に基づく協調的な手続を採ることを明記している。この手続の下では、複雑な経済実態の「実態解明機能の確保」のためには、企業に適正な各種弁護権を容認し、一方的な審査権行使を排除し、多角的な視点から複雑な経済実態を解明することが独禁法の目的に沿っていると考えられている。

(5)「実態解明機能の確保」のためには審査手続の公正化が必要であること
 複雑な経済実態の下で「経済実態解明機能」を確保するためには、適正な審査権が必要であることは当然であるが、それと同時に、審査権の一方的な行使や不適正行使を抑圧し、企業側に適正な各種弁護権が容認されて、審査手続の一方的な審査権行使が抑制され、両当事者間で率直な「対話」ができるように審査手続の公正化が必要である。すなわち、複雑な経済実態の解明のためには、複眼的・多角的な視点からの審査が重要であり、審査権の一方的行使の抑制、企業側への各種の弁護権の付与、両手続当事者間の「対話」の促進などの審査手続の公正化が重要である。


4.独禁法違反事件と刑事事件・行政事件との関係では、その相異点に留意すること
懇談会の「論点整理」の2(3)は「国内の他の行政調査手続及び刑事手続との整合性」を検討している。刑事事件は基本的に倫理規範に違反する社会秩序違反の事件であり、その違法性については一般に十分認識されているところであるが、独禁法違反事件の場合には複雑な経済と抽象的で難解な法令の融合物であり、経済秩序違反の事件であるため、その違法性についての知識は一般に乏しく、弁護士の助言を受ける必要性が大きく、両者の間には大きな差異がある。
 また一般の行政事件の場合には、社会的側面の事件が多く、この行政事件は直接・間接許認可権と関係がある場合が多く、価格・設備等の許可基準は法令で具体的に定められ、その解釈は主管官庁の裁量についてかなりの範囲で認められ、概念的な解釈によるのが通常である。行政手続法柰第13条は、行政上の重大な不利益処分を許認可に関連する事件を中心に仕分けしているが、独禁法違反事件は許認可に関係しないため、同法13条の規定では独禁法違反の処分がこの基準に該当するか否かが不明確である。しかし、独禁法違反事件の処分は、企業にとっては重大な不利益処分であり、このことは最近の高額な課徴金賦課からも明白である。一般の行政事件と比較すると、独禁法違反事件場合には、直接・間接に許認可に関係しなくとも、重要な不利益処分に該当し、個別事案の事実認定について証拠による客観的・実証的な認定が必要とされており、この事実認定に基づく排除措置等も裁量は極めて限定されて法令解釈の法令の適用も難解な場合が多く、一般の行政事件とは異なることに留意する必要がある。したがって、独禁法の弁護権に関する問題は、行政手続及び刑事手続よりも、難解な経済実態における事件に対して抽象的な規制規定を適用するという点で極めて特殊な問題を持っている。したがって、刑事事件・一般の行政事件の規制手続よりは外国の独禁法の規制手続を参考にすることが適切である。とくにこの点は、現在の経済のグローバル化の急激な進行の下における独禁法の運用にとって重要である。


5.参考にすべき外国法は、米国とEUの独禁法執行手続であること
懇談会の「論点整理」2の(4)は「海外の制度・仕組みや実務との関係」を検討している。多数の外国独禁法の中で最も整備され強力に運用されているのは、米国とEUの独禁法であり、外国法を参考にする場合には、米国法及びEU法を参考にすることが適切である。両法とも、憲法上の「デュープロセスの原則」ないし基本的人権の見地から独禁法の執行手続について事前聴聞権(処分前に処分案を相手方企業に告知して被処分者である企業に争うことを認める制度)を基盤とし、この事前聴聞制度が適正に運用できるように各種の弁護権が認められている。

(1)米国の独禁法執行手続では、審査権と聴聞権・弁護権の保護が基本であること
 米国の場合、司法省反トラスト局は違反事件の審査と訴追を行い、同局は違反があると認めるときはその事件の審理と処分を裁判所に請求するだけで、事件の審理と処分は司法省から完全に独立した裁判所が行う制度となっている。すなわち、独禁法違反の訴追機能と審理・処分機能は、その制度そのものが完全に分離され、被処分者は最大の手続上の保護が与えられている。米国司法省の執行手続は、司法省「反トラスト局マニュアル」(司法省のHPで入手できる)に詳しく記載されている。これに対して連邦取引委員会(FTC)は、訴追機能と審理・判断・処分機能の両者を持っているが、訴追機能と審理・判断機能は内部的に完全に分離され、独立性の保障された聴聞官(行政法判事)が審査官の審査事件について中立的・客観的に審理・判断する制度となっている。FTCの執行手続は、「連邦規制規則第16編:16 CFR」(FTCのHPで入手できる)に詳細に規定され、そこでは関係事業者は、各種弁護権のほか審査当局と「対話」のための会合をもてることが規定されている。一般に参考とされるのは、司法省よりもFTCの手続である。

(2)EUの独禁法執行手続では、審査権と聴聞権・弁護権の保護が基本であること
   EUでは当初から事前聴聞権が最も基本的で重要な企業の弁護権として認められていたが、それを実質的に充実させるために、弁護士顧客秘匿特権・自己負罪拒否特権など各種の個別の弁護権が主として1980年代から裁判所により欧州基本的人権条約に基づき認められてきている。1990年代後半から独禁法違反の制裁金が急激に高額化したことから産業界の手続の公正化に対する要求が強くなり、米国FTCの制度が参考にされ、2011年10月、EUは独禁法の執行手続に関する「ベストプラクティス告示」を設定した。その内容は、米国FTCの執行手続(連邦規制規則16編:16 CFR:FTCのHPで入手できる)とほぼ同内容である。この手続規則では、各種の弁護権が制限つきで認められているほか、審査段階の節目ごとに審査官側の被疑事件の内容が関係事業者側に開示され、また関係事業者は審査担当官及びそれ以外の審査管理部門・チェック部門の幹部と会合を持ち手続当事者間で「対話」ができる制度が具体的に規定されている。ここでは、審査官の一方的な審査権行使は排除されている。

(3)米国独禁法執行手続の基本原則は手続当事者間の「対話」であること
   「海外の制度」との関連で、米国司法省バーニー(C.Varney)反トラスト局長の、2009年9月12日に国際法曹協会(IBA)で「手続上の公正性」と題する講演(米国司法省のHPで入手できる)は重要であり、国際的に強い注目を引いた。バーニー局長は、「独禁法の実体的な成果は手続上の公正性と表裏の関係にあり、手続上の公正性が確保されなければ実体的な成果は評価されないのであり、手続上の公正性の確保は重要である。」、「手続上の公正性は、関係企業の防御権として必要であるばかりでなく独禁法を適正に運用するために執行機関にとっても重要である。」、「執行機関の考えを非公式に手続当事者の批判に曝し、それによって手続当事者を真実の論点に議論を集中させることが重要であり、このことによってより良い執行結果が助長される。」、「手続当事者間で『対話』(dialogue)が重視されるべきであり、この対話が審査段階におけるオープンな心情を起こさせる。事件審査の将来の見通しを正しく認識するためには、手続当事者の批判的見解が実際の審査局内の審査担当部門とは別に審査管理部門や経済的なチェック部門にまで伝達されることが必要であり、最終結論の前に当事者は反トラスト局長等の管理部門と率直な意見交換の会合を持つことができる。また、当事者には当局と協議して事件を同意命令手続(セツルメント)により解決する方法も設けられている。」と述べている(以上5~6頁)。この演説は、米国における独禁法執行手続の隠れた側面を明確に表現したものであるが、それが2000年代の新しい複雑な経済情勢の進展の下における独禁法執行手続の在り方の新しい考え方として革命的な影響を持つことになり、国際的な「独禁法執行手続における公正性と透明性」の検討の出発点となった。
OECD競争政策委員会は、2009年から独禁法の「執行手続の公正性と透明性」について審議し多数の加盟国からの報告書を検討し、2回の中間報告を公表した後、2012年4月に最終報告書を公表したが(以上の報告書はいずれもOECDのHPで入手できる)、この最終報告書の中で主要国の間で独禁法の執行手続において「公正性と透明性」の確保が必要であることについて国際的なコンセンサスが形成されているとしたうえで、上記バーニー反トラスト局長の演説を引用して執行手続における公正性の確保の重要性を強調している。EUの2011年の「ベストプラクティス告示」は、手続当事者が競争総局の局長、競争担当委員などの幹部との会合を規定しているが、それはこの演説及び米国FTC手続規則に影響されたとみることができる。いずれにしても、世界で最も整備され、協力に運用されている独禁法を持っている米国とEUの独禁法の執行手続とその考え方は2011年のEUの「ベストプラクティス告示」の設定によりほぼ完全に調和されたことになるので、この時点で独禁法の執行手続についてはグローバル・スタンダードが成立したといえるであろう。なお、上記OECDの2012年の最終報告書では、独禁法執行手続において「公正性と透明性」の必要性について国際的なコンセンサスができているとしている(5頁、11~14頁)。我が国は、政治的には自由民主主義制度を採り、経済体制としては自由私企業体制を採用しているので、このグローバル・スタンダードに速やかに適応する必要があるし、グローバル経済が急速に進行している状況の中でこの必要性は強いと考えられる。

(4)平成25年改正法の国会審議では、事前聴聞制度の導入が明確にされたこと
   平成25年改正法の国会審議においては、政府側答弁(稲田朋美国務大臣及び杉本和行公取委委員長の答弁)は、審判の廃止が産業界の外観上の不公正さの批判に対応したものであり、審判の運営は従来から公正中立的に運営されてきており、今回の改正により排除措置命令が最終処分になるので処分前に行なわれる「意見聴取手続」はデュープロセスの原則」に基づき対審構造により証拠に基づく事実認定を慎重に行うことを明らかにしている。したがって、改正法の「意見聴取手続」は、米国・EU型の事前聴聞手続を採ることを意味しており、これは「対話」の考え方に立った手続である。この国会の政府答弁で明らかにされた改正法の「意見聴取手続」が準司法的な事前聴聞手続であるとの説明は、事前聴聞手続が企業の防御権にとっては極めて重要な制度であることから、高く評価できる。そして、この事前聴聞制度が有効に機能するためには、審査段階でも事業者に十分な防御権が与えられて、審査官が多角的な視点に立って「対話」の考え方にしたがって複雑な経済実態の正確な把握ができるようにすることが必要である。


6.行政調査手続の適正性及び透明性の確保の点から手続マニュアルの公表が重要であること
懇談会の「論点整理」の2の(5)は、「行政調査手続の適正性及び透明性の確保」を検討している。上記(5)で述べたように、米国及びEUにおいては独禁法執行手続について詳細な規則ないしマニュアルが公表され、その中で適正な審査権の範囲の問題や各種事業者の各種の個別弁護権の問題が記載されており、それは平易に書かれている。この詳細で分かりやすい規則の公表が、規則の内容とともに執行手続の公正性と透明性を向上させ、一般の事業者等の手続に対する信頼性をより強くするのであり、このことは上述のバーニー米国反トラスト局長の演説が強調しているところである。公取委の審査手続の適正性と透明性の確保のためには、各種事業者の弁護権の整備とともに、公取委の執行手続の適正性と透明性が理解できるように詳細な執行手続のマニュアルないし解説が必要である。このように整備された執行手続きは一般の事業者等の信頼を向上させ、それは独禁法の執行力強化のために最も重要な措置であると考えられる。


7.審査官手持ち資料の全面的開示が弁護権として重要であること
  米国及びEUでは、「デュープロセスの原則」に基づく処分前の事前聴聞制度が企業の防御権の基本的な制度となっているが、この制度を実質的に保護するために、審査官が収集した審査官手持ち資料は原則としてすべて開示して企業側がそれを証拠として利用できることを法令で明記している。審査官が強制的な審査権限を背景に収集したのは公益上の見地からの排除措置命令を行うためのものであり、審査が複眼的・多角的な視点から客観的に行われる必要があることから考えれば、この膨大な審査官資料を相手方事業者に全面的に開示しそれを証拠として利用できるようにすることは必然的に必要になってくる。
米国ではかなり古くからこの全面的開示制度は整備されていた。EUの場合、当初欧州委員会は審査官が収集した資料のうち違反を立証する黒の資料を審査官が証拠として提出し、審査・審理の効率的運用のためそれ以外の資料を基本的に企業側に開示をしていなかったが、1996年のソーダ灰カルテル事件の第一次裁判所は、その審理で欧州委員会がこの考えの下で審査官手持ち資料開示を拒絶したことについて、独禁法事件では複雑な経済実態に対応して証拠の取捨選択や証拠の評価も規制当局側が一方的に行なうことは適切ではなく、相手方企業の異なった視点から関係証拠を利用し複雑な経済実態を精査する必要があるので、審査官が公共の見地から公権力の下で収集した資料を審査官側だけの一方的な判断で選択して証拠として利用し、相手方当事者に対して審査官手持ち資料を開示しないことは手続上の「武器平等の原則」に違反し欧州人権条約6条「公正な審理」の原則に違反するとしてその審決を無効とし、委員会に対して審査官手持ち資料の全面的開示を規定する立法措置を採るよう命じ、それは最終的には2003年の理事会規則第1号27条2項で明記されることになった。米国ではかなり以前から審査官資料はほぼ全面的に開示しており、それには黒のみならず白の資料も含まれている。FTCでは審査官が収集した資料はすべて別個の資料保管機構(custodians:16 CFR 2.26条)に移されその資料の開示は、FTC規則(16 CFR 3.31条)に記載されており、EUのそれは「告示」92~94条に記載されている。
審査官の収集した資料は極めて膨大になるので、米国及びEUでは審査官資料を標題と概要を添付してCD-ROMで手続当事者に送付されている。そして、この膨大な電子記録を指示された視点にしたがって分析し評価することを受託する会社が米国及び欧州で発展している状況で、独禁法違反事件の立証方法は現在大きく革命的に変わりつつある。


8.その他の関連する事項
(1)独禁法執行手続についてグローバルスタンダードが成立していること
  懇談会の「論点整理」の2の(2)(意見)(7頁)及び同2の(4)(意見)では、稲田国務大臣は、「グローバルスタンダードとは何かは別途議論しなければならない問題であるものの、防御権の制度を導入するためには、グローバルスタンダードの観点から、審査権限もある意味では強化しなければならない」と指摘され、また「論点整理」の2(4)(意見)(9頁)では「グローバルスタンダードとは何かは別途論じなければならない問題であるものの、競争政策を論じる中で、グローバルスタンダードをいかに確保するかという視点を考えなければいけない。」と述べられているが、独禁法の執行手続を考えるに当ってこのグローバルスタンダードの問題は極めて重要である。
  世界で最も整備され強力に運用されている独禁法は米国とEUの独禁法であり、また米国とEUの市場は世界市場の中で大きな比重を占めている。このような状況の下で、2011年10月にEUの独禁法執行手続において米国FTCの独禁法施行手続とほぼ同様の「ベストプラクティス告示」が設定されたことは、独禁法執行手続についてグローバルスタンダードが形成されたことを意味する。EUの独禁法(競争法)は、当初の1962年の執行手続において事前聴聞権(Right to be heard)を基本原則とし、1980年代にこの基本権を充実するために主として人権条約に基づき各種弁護権が判例により認められ、1990年代に審査官手持ち資料の全面的開示が複雑な経済実態の下で聴聞権を擁護して経済実態に即した運用のために不可欠としてやはり裁判所により認められていた。しかし、高額化した制裁金に不満を持つ産業界は独禁法執行手続が規制官庁の一方的な行使に対する不満は強く同手続を米国並みの権利尊重の手続にするよう強く求め、その結果設定されたのが米国FTCの手続規則(Title 16 Code of Federal Regulations:16 CFR(FTCのHP)で入手できる)とほぼ同内容のEUの2011年の「ベストプラクティス告示」(EUのHPで入手できる)の設定である。この「告示」が米国FTCのCFRと同様の内容であるということは、FTC規則の執行手続の基本的考え方が聴聞権を基盤としながら、手続当事者間の「対話」を基調として、企業側は審査段階の節目ごとには審査側と会合し率直な意見交換が許容されていることであるが、このことをEUの「告示」がそれ以上に明確に「対話」のための会合を明記し、審査側の一方的な審査が排除・抑制していることである。また、米国独禁法は典型的な判例法であるがEUはすでにその競争法が判例法(Case Law)であることを公言している(2010年の「垂直的制限行為ガイドライン」「前文」4節)。世界の法制は、西欧大陸の「成文法主義」型法制と英米法の「判例法主義」型法制に分類されていたが、EUの競争法は明確に英米法の判例主義の法制に代わり、その執行手続も米国FTCの施行手続に同調したのである。この意義は大きい。
 上記事実は、独禁法が対象とする経済実態の最近の複雑化と関係がある。現在、国際経済は情報技術革新の浸透とWTOを中心とする自由貿易政策の促進の下で急速なグローバル化の展開が行われているが、このグローバル化による経済実態に対する経済実態に即した独禁法の規制のためには、審査側の一方的な審査活動で解明されないことは、上記Ⅰの1で見たところである。このような状況変化の下で、「執行手続の公正化と透明化」が国際的に議論となってきている。すなわち、現在、「独禁法執行手続における公正性と透明性」の議論が国際的に広く見直しの検討が行われている。先進国のクラブと言われるOECDでは、2009年詳細な検討を行い、2回の中間報告を公表し、2012年4月には最終報告書を公表している(OECDのHPで入手できる)。また。100か国以上が加盟する国際競争法ネットワーク(ICN)も「独禁法執行手続と公正性」の問題について、米国FTCとEU競争総局が幹事となって検討を行っている。このような状況の下で上記グローバルスタンダードが成立したのであるからその意義は重要である。
 このような国際情勢の下で米国及びEUの間で独禁法執行手続に関するグローバルスタンダードが形成されたことは我が国にとっても重要な意義を持っている。わが国の独禁法執行手続をこのグローバルスタンダードの執行手続に同調させることは、西側市場経済大国である我が国にとって、極めて重要でありかつ急務であると考えられる。各国の独禁法は国際経済の中で重要な機能を果たしており、この独禁法の運用においてその執行手続が現実に重要な影響を持っており、そのことは適用を受ける産業界においても執行当局においても決定的に重要である。今回の審査手続における弁護権の検討においても、この観点を重視する必要がある。独禁法違反事件における企業の弁護権の問題は、この点で刑事事件や一般の行政事件とは著しく異なる側面があることに留意し、独禁法執行手続のグローバルスタンダードの視点からの検討が行われる必要がある。
上記OECD及びICNの上記問題の検討には公取委が参加しているのでこの問題に関する情報を公取委から入手することができる。なお、上記OECDの報告書については国際商事法務41巻2・3号(2013年2・3月)に佐藤宏氏の紹介があり、EUの上記「ベストプラクティス告示」については「国際商事法務」42巻7号(2014年7月)に佐藤宏氏による翻訳がある。

(2)「審査手続における公正性」の基本は「対話」であること
上記審査手続における手続当事者間の「対話」制度(対話権)は、円滑な審査活動に必要で双方にとって実際上も極めて有益な制度であり、審査手続の公正性と透明性の確保の見地からも重要である。この「対話」の考え方に基づく手続当事者間の会合については、米国のFTC規則(16 CFR)2.4条「審査方針」は、審査のために強制的審査権が必要であることを述べた後、「資料と情報の強制的又は任意的な提出であるかを問わず、対象となる情報及び資料の性格と範囲に関する混乱と誤解を防ぐために、委員会は、すべての手続当事者が審査職員と意味のある討議を行うことを期待している。」として手続当事者と審査職員との「対話」を公認している。EUの「ベストプラクティス告示」は、「当事者及び第三者との会合と審査情報の提供」(42~45条)、「進捗の会合と審査状況の説明」(60~66条)、「三者会合」(67~69条)及び「委員又は局長との会合」(70条)を明記し、また「情報請求又は立入検査が行われた後に、当事者はいつでも競争総局に、手続開始を含む審査の状況について尋ねることができる」と規定されている(15・16条)。わが国においても、審査開始後実際に意味のある「対話」と審査情報の提供について規則で明記される必要がある。我が国の場合、審査官にもよるが、通常企業側からの質問には審査官は返答せず、対話は行なわれず秘密裏に一方的な審査が行なわれている。この審査活動に対する企業防衛の実務上重要な意味を持つ「対話」の運用においては弁護士の役割は大きい。資料提出の期限など技術的な問題については多少話合いが行なわれているが、重要な審査の内容についての協議は一方的に拒絶されている。新聞報道によれば、立入検査後殆どの企業は公取委の調査には協力すると言っており、この実質的に意味のある「対話」が制度的に導入されて規則に明記されれば、円滑な審査と審査手続の公正化に相当の効果が期待できる。また、「対話と討議」を促進するために、米国・EUと同様に、審査局内にその対話を促進するための法律的・経済的な管理部門を設けることも考慮される必要がある。

(3)「審査手続の公正性と透明性」の確保には詳細な手続規則の公表が必要であること
上記米国FTCの16 CFR及びEUの「告示」は、いずれも平易で分かりやすい詳細な規定であり、これは手続の公正性と透明性の確保にとって重要である。それは関係者にとっては必須のスポーツの競技ルール集のような役割を果たしている。わが国においても手続について同様な文書を公表することは、事業者・消費者などの公取委の「手続」に対する信頼性を増大させ、事業者に有益であるばかりでなく、公取委の手続の円滑な運用に寄与し、執行力の実質的な強化になるので、この文書の作成・公表を要望する。

(4)独禁法の判例法的性格を尊重する必要があること
米国独禁法は伝統的に判例法であり、EUも競争法が判例法であることを明記しているが(2010年流通(垂直的制限)ガイドライン前文(4)項)、判例法は個別事案に対する抽象的な規制規定を個別事案の証拠に基づく実証的な認定と法適用を通して形成される。わが国の場合にも独禁法の判例法的な性格は明らかであるので、執行手続が客観的・中立的に行われる必要があり、このことは手続管理官の独立性の保障とともに審査段階における弁護権と重要な関係がある。

(5)「対話」の考え方に基づき同意命令手続を検討すること
同意命令手続は、今回の検討範囲には入らないと考えられるが、同意命令手続と審査手続の公正性と透明性における「対話」の考え方とは密接に関連する側面がある。同意命令手続は、審査手続きにおける手続当事者間の「対話」を前提とし、この「対話」の延長線上の問題だからである。「対話」の結果両当事者間で合意が行われれば、その合意に基づく措置が採られるのは当然だからである。現在、米国法及びEU法において同意命令手続(セツルメントとも呼ばれる)は法律上明記され、独禁法違反事件の大半はこの同意命令手続で処理されている。この手続では事実及び排除措置(制裁金を含む)について審査官側と企業側が協議し、協議が整えば同意命令案を作成し、それを一般に公表して意見を聴取し、異論がなければ同意命令として処理する一種の略式手続である。現実には証拠の状況を基礎に争った場合の双方の負担をそれぞれ考慮して協議・妥協が行われるのであり、その内容は必ずしも緩いものではなく、審査官側が有力な証拠を持っていると考えられる場合には排除措置の内容は違反の実態に対応して正式処分より厳しくなる場合がある。現在、米国及びEUでは、審査事件の大半はこの同意命令手続で終わっており、極めて現実的に重要な違反事件解決方法である。
   我が国でも平成17年改正前の勧告手続は、米国FTCの同意命令手続を参考にして設けられたもので、勧告手続の本質は同意命令手続であった。したがって、勧告手続の場合、審査部内において聴聞が行われ、「対話」が行われ、そこで事実と排除措置についての審査側と企業側との間で協議が行われ、妥結した場合にはそれを勧告内容として勧告審決が行われていた。しかし、昭和28年改正のころから勧告手続の方法が変わり始め、特に1970年代の石油危機の際の多数の大企業の価格協定事件の規制の際には、勧告手続において審査側と企業側の協議は行われることなく、勧告手続は公取委の一方的な措置として利用された。そして、昭和52年(1977年)独禁法改正による「裁量のない課徴金制度」の導入は、この一方的な審査権行使方法をさらに促進したのである。この勧告手続は平成17年改正の際に、事前審判手続とともに廃止された。しかし、この同意命令手続である勧告手続は、「対話」を基調とする審査手続の延長線上の問題であり、審査手続の公正化と透明化と密接な関係のある問題であって、別途、検討される必要があろう。課徴金制度は「不当利得の剥奪」という見地から導入されたが、課徴金率の増大により制裁的性格が強くなり、カルテルの累犯者等に50%増の課徴金を規定している(法7条の2第6項)。課徴金が行政制裁であるとすれば、裁量制を導入すべきであるとの問題が生じ、また高額の行政制裁と刑事制裁との重複は二重制裁の問題も顕在化するのであって、これらの問題も今後の検討問題として残された問題である。

(6)違反事件関係の資料の手続当事者以外の第三者への開示を禁止すること
 審査官が特定事件について独禁法47条に基づいて収集した資料は、独禁法の排除命令及び課徴金納付命令のために収集した資料であるので、手続対象者以外の第三者に対して開示するのは違法であると考えられるのでやめる必要がある。米国法及びEU法ではこの点は厳格に守られおり、独禁法執行手続の国際的なハーモナイゼーションの見地からも第三者に対する開示を止めるべきである。
 第三者への開示の根拠としているのは独禁法70条の15(平成17年改正以前は69条)の「利害関係人」を手続対象者と区別して開示内容を限定することなく、一律に広く解釈しているのであるが、本来この規定は審判手続の適正な運用のために、主として手続対象者の防御権として認められたものであるので、審判開始決定書など一般に公表できる資料以外の違反事件の証拠資料を手続対象者以外に開示することはこの規定の趣旨を逸脱するものである。私的な民事訴訟との関係では独禁法は同法25条に基づく関係があるだけである。米国等では、民事訴訟における当事者主義の原則の下で行政官庁が公権力で調査した資料を民事訴訟に利用できないのが通常である。

(7)審査中の審査内容の秘密は厳守される必要があること
 違反被疑事件は最終結論が出るまでの審査中は重要な秘密事項であるにもかかわらず、わが国においては審査当初の立入検査の時点で一斉に新聞で報道されるのが通常であり、この内容がほぼ同一であり報道時期も同一なので公取委から情報提供がなされているのではないかという疑問がある。審査内容は正式処分が行われるまでは秘密であり、この秘密の厳守は、独禁法38条及び39条で定められ、この規定違反に対しては罰則が定められている(93条)。このような新聞報道により企業は多大の損害を受けており、外国企業はこの事実に強い不信感を抱いており、この根絶が必要である。この問題について企業は非常に強い不満を持っているが、公取委が怖くて泣き寝入りである。この問題は公取委に対する企業の不信感を増大させ、決して公取委のプラスになる問題ではない。EUの「ベストプラクティス告示」では最終処分の公表の場合においても事前にその内容を関係企業に送付し、マスコミに同社の見解を述べる機会を与えており、慎重な態度がとられている(告示145条~150条)。わが国の立入検査の一斉報道がそのまま継続されれば、いずれは国際的に非難される国辱ものであり早急にこれを止める必要である。

(8)リニエンシー制度の運用に関する若干の問題点
 リニエンシー制度自体は「裸の価格協定」に対する対策として極めて優れた制度である。この存在だけでカルテルを行う意欲を減殺し隠れたカルテル抑制策になる。しかし、現在のこの制度の運用には若干問題がある。企業側は独禁法違反事件で争っても勝つ見込みは極めて少ないので、独禁法違反の疑いがあると、競ってリニエンシー制度を利用して課徴金減免を求める傾向があり、このため独禁法上グレーの事案でも独禁法違反になるか否かを精査することよりも競って早く公取委にリニエンシーを申請する傾向があることである。したがって、この申請を受けた公取委はこの点を厳密に審査する必要があるし、弁護士もリニエンシーを用いながらグレーの問題の指摘をする必要がある。そして、リニエンシー制度がこのような問題が随伴することを前提にして、このグレーの問題が厳正に解明し独禁法が適正に運用されるように配慮する必要がある。このためには審査官側は、企業側がグレーの段階で申請していることを十分に理解しつつ、厳正に審査をする必要があると考えられる。グレーであってもリニエンシーによる情報は審査官にとっては十分重要な情報である。


Ⅱ 「論点整理」の3の個別「論点」に関する意見

1.個別の「論点」に関する基本的な考え方
懇談会の「論点整理」の3は個別の論点について検討している(12頁以下)。独禁法違反事件の実態解明のために強制的な審査権が必要であることは当然であり、それは独禁法47条に規定されている。しかし、強制的審査権の適正な行使範囲がどこまでであるかは明確にされる必要があり、その上でこの問題に対応する企業側の適正な弁護権の問題が検討される必要がある。各種弁護権は適正な審査権行使に対応するものであり、弁護権は基本的に助言することであるので、そしてまた審査権行使の行き過ぎの可能性が現実に存在するので、この弁護権についてそれを権利として認めるか否かの選択ではなく、原則として弁護権を認めた上で、適正な弁護権の範囲がどこまでであるかを検討することが重要である。この場合、適正な審査権の行使を妨害するような弁護権の行き過ぎは当然抑制される必要がある。しかし、審査権の不適正行使の可能性がある以上、基本的に企業の各種弁護権は原則として認められるべきである。また、最近の経済実態の複雑化に伴う新しい国際的な独禁法執行手続の考え方として「対話と討議」が審査権行使のグローバルスタンダードとなってきていること、この「対話」の有効な実施のためには弁護権の容認が必要であることを十分に考慮して、また一方的な審査権行使を抑制することを考慮して、この検討が行われる必要がある。
 強制的審査権のうち、報告命令と資料提出命令についてはその報告又は資料の範囲が違反被疑行為の実態解明の範囲を逸脱せず、提出期限が適正であれば問題は少なく、最も問題が大きいのは立入検査と供述調書である。以下、個別論点で記載された点のうちの若干問題についてコメントするが、検討の基準となるのは独禁法執行手続については米国法及びEU法を中心にグローバルスタンダードが形成されているので、米国法及びEU法の審査手続を参考にして意見を述べる。


2.立入検査の限定

(1)立入検査は企業活動の重要な制限であり、適正な範囲に限定されるべきこと
独禁法で規定する「立入検査」(47条1項4号)は、憲法35条の「住居の不可侵」の例外規定であるから、「裸の価格協定」など証拠の隠蔽・散逸の可能性が強い場合などごく特殊な場合に限定して認められるべきである。現状では存在が明白な契約の拘束条件等又はその運用に関する当事者間の争いの場合であって一方の当事者が申告しているような場合でも立入検査が行われ、この場合に審査官は一方の当事者から契約書を入手しているのが通常であるので、審査の場合報告命令書(47条1項1号前段)又は出頭供述命令(同条同項同号後段)で行えば十分である。しかも、この立入検査が行われると、それは独禁法被疑事件として大きくマスコミに一斉に報道されており、企業の基本的な権利が侵害されている。また、立入検査は殆ど抜き打ち的な「暁の襲撃」の方法で行われており、必要最小限度の権限行使といえるか否かの問題がある。食品衛生法違反などにおいても、立入検査は「暁の襲撃」のように抜き打ち的に行われているわけではない。EUにおいても審査手続の開始について関係事業者に通告の後に立入検査が行われるので(「告示」21条)、抜き打ちではないが、価格協定は別扱いである(同24条)。
立入検査についてはそれが行われる場合を限定すると同時に、立入検査の方法も「暁の襲撃」ではなく、予告した立入検査も検討され、この強力な権限行使の方法を「必要最小限度」という観点から限定する必要がある。「暁の襲撃」とその後のマスコミによる一斉報道により、この立入検査は事実上の企業に対する制裁措置となっている。被疑事実の調査の冒頭における一斉のマスコミ報道は、撲滅すべき重大な問題である。公取委が、正式被疑事件の開始を公表する必要があると考えるのであれば、それは立入検査と別個に公表すべきである。

(2)「実況見分」は「差押え」ではないので、「実況見分」に限定すること
独禁法47条1項4号の立入検査は、「事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること」と規定され、その実質的な内容はいわゆる「実況見分」(検査)のことであり、物件の「差押え」(刑訴法99条・218条)まで認めているものではない。しかし、実際には立入検査の際に必要な書類等を強制的な提出命令書(法47条1項3号)により直ちに書類の提出を求めることは、実質的には通常一定の「令状」を持って行われる「差押え」と同等のことが脱法的に行われていることになるので、書類等の提出方法は十分慎重に行われる必要がある。
立入検査の際に審査官から特定種類の資料に対して任意提出を要請し資料の領置(刑訴法101条・221条)を求める可能性があるが、この領置されたものの返還は通常困難な上、企業側はこの時点では被疑事項も明確に把握しておらず、異常な状況の下における資料の任意提出要請は、「差押え」の脱法ともみられるので適切ではない。審査官の要請が強い場合には、弁護士の到着を待って弁護士に相談する必要がある。

(3)資料提出命令による資料提出には一定の期間の余裕が必要であること
通常の書類提出命令の場合には提出までに一定の期間の余裕が認められている。したがって、立入検査においても基本的に資料提出までには一定の期間の余裕が認められる必要があり、差押えとは明確に区別されるべきである。企業側は提出までの間に提出書類のコピーを行うことができる。

(4)立入検査においては原則として任意の調査は行わないこと
立入検査は「暁の襲撃」として抜き打ち的に行われ、企業にとっては衝撃的な審査開始の方法である。このような異常な場合には任意調査といってもそれは完全な任意の承諾の下で行われるとはいえないので、立入検査の際には原則として任意調査(例えば資料の任意提出)が行われないようにする必要がる。


3.具体的な被疑事実の告知・立入検査時の弁護士の立会い等
(1)被疑事実の具体的な告知が必要であること
立入検査に際して、審査官は審査官証を提示してそれを行うが(法47条3項)、その審査官証には審査対象事業者又は団体、対象となる商品又は役務、及び独禁法違反の行為類型が極めて抽象的に必要最小限に記載されており、より具体的な告知が必要である。立入検査の前にその時点で告知する具体的・暫定的な被疑事項をできるだけ詳しく書面に整理して立入の際に提示することがその後の企業側の協力を求める場合にも必要である。

(2)立入検査は強力な強制的審査権の一方的な行使であり弁護士の同伴は必要であること
立入検査は、上述したように、殆どすべて「暁の襲撃」といわれるように、全く予告なしにある日突然抜き打ち的に業界全体に対して数十名を超える多数の審査官が動員されて行われ、通常その日は夕方まで検査が行われ、その日の夕方にはマスコミにより一斉に大きく報道されるのであって、企業側にとってはそれは衝撃的な出来事である。このような状況の下における審査活動に対応して、企業が弁護士同伴を要請するのは当然であり理由がある。通常、企業側は立入検査に際して弁護士を呼ぶことを準備しているので、弁護士の到着に多くの時間はかからないと考えられる。弁護士の到着までに重要な資料が隠蔽されるおそれがあるとするならば、必要最小限度の範囲で実況見分をして証拠保全措置を採り、弁護士が到着した後に資料提出命令を出すようにする方法が考えられる。そして、このような異常な状況の下での企業に対する任意の資料提出や供述要請などは、すべて控えるべきである。
 企業としては、当該事案の審査の開始の冒頭であり、立入検査の場合にできるだけ多くの被疑事実に関する情報を審査官から聞く必要があるし、検査対象を被疑事実の関係する範囲に限定し、提出資料の検討のためにも、またリニエンシー制度の利用の判断のためにも、弁護士の立会いは必要不可欠である上、弁護士と審査官の対話によって具体的な被疑事実と審査の規模・今後の見通しなどについてもできるだけ情報を入手して、今後の対策のための基礎作りを構築することを考えるのは当然である。この強力な審査権行使に対応するために弁護士の立会いは当然であると同時に、弁護士は助言する以外に何の権限もないのであって、弁護士が適正な審査権の行使を阻害する蓋然性はないのである。
  弁護士は、適正な審査権の行使を阻害するよりは、それを理解しようとし企業に対し審査に協力するように説得するのが通常である。審査の当初における弁護士と審査官との間の対話が円滑に行われれば、その後の両者間の協力関係は促進され、多角的な視点からの審査が容易になり、これは審査側にとっても重要な成果となると考えられる。適正な立入検査の内容・範囲が明らかにされれば、立入に際して審査官と弁護士との間に対立する要因はなくなると考えられる。


4.弁護士・依頼者間秘匿特権
企業は企業活動に伴う様々なリスクを抱えており、それらのリスク回避のためには法律上の知見が必要な場合が多く、この点については弁護士に助言を求めるのが通常であり、この法律上の助言は企業にとって極めて重要である。この観点から弁護士・依頼者秘匿特権が認められており、これは企業の法令遵守制度の基本に係る問題である。企業は経営上のある具体的な生産・販売・投資のプロジェクトを立案する場合にそれが独禁法上可能かどうかについて法務部に検討を求める。法務部ではそれを検討して、要約すれば独禁法上の問題となりうる点を例えば30点に絞ってそれを弁護士に相談し、弁護士は要約すればこの質問を〇×△の3つに分類して独禁法上の評価をして回答するが、独禁法上の弁護士・依頼者秘匿特権の問題はこの文書を審査官が違反被疑事件の証拠として使えるか否かの問題である。規制当局がこのプロジェクトが独禁法違反の疑いがあるとして審査を行った場合、上記企業と弁護士の間の法律上の想定問答文書はプロジェクトの核心部分と関係があるのでその証拠となりうる場合がある。もし審査官がこの文書を証拠として用いた場合には、企業は企画検討段階で独禁法の問題について弁護士と率直な意見交換を行うことが困難になり、企業の独禁法順守体制は大きく毀損されかねない。そこでこのような弁護士・依頼者間秘匿特権という制度が存在しこの文書は証拠として使えないとしている。
この弁護士・依頼者秘匿特権については、米国FTCの手続規則(60 CFR 2.11条(d)(1)(i)項)及びEUの「ベストプラクティス告示」(51~58条)で条件付きで認められている。すなわち、この特権は基本的に認められているが、ある文書がこれに該当するか否かは当事者で争いが起こる可能性があり、争いの場合には最終的には裁判所で判断する重要問題である。まず認められる文書の範囲を定義することが重要でこの特権自体を認めないということには根拠はないと考えられる。また、この問題を不明確なまま放置して該当文書を公取委に提出した場合には米国及びEUにおいてこの特権を放棄したものとみなされる可能性がある。


5.自己負罪拒否特権
自己負罪拒否特権は、憲法38条1項で「何人も自己に不利益な供述を強要されない」と規定され、これは通常「黙秘権」と呼ばれている。強要のほか誘導尋問などによる場合も質問の答弁者はこの質問を拒否することができる。これは不正な手段による質問を防ぐためであり、当然認められるべきである。EU「ベストプラクティス告示」36条にこの自己負罪拒否特権が規定されている。自己負罪拒否特権が認められない場合には、誘導尋問が行われやすい状況が生じる。


6.供述調書・弁護士の立会い・調書のコピー提供
(1)供述調書の任意性については十分な検討が必要であること
独禁法47条1項1号は、「事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し」として強制的な審尋権を規定しているが、通常この規定は使われず、任意の供述録取の方法が採られる。それではこの任意供述録取が十分な任意性を持って行われるかというとそうではない。強制的な審尋を背景に準強制的な方法で供述録取が行われる。供述人は、出頭を要請された場合それを断ればその後の審査で企業が不利になると考えて出頭するのであり、また誰も密室で助言者なしに複雑な質問による取調べを好む者もいないが断ることができないのである。審査官の方は、被疑事項については委員会の承認を受け、その後立入検査で被疑事項は固められ、マスコミ報道で一般にも被疑事項が印象づけられており、審査官はそれを背景に領置した資料を詳細に検討して質問事項を作成して取調べに臨むのであり、しかも独禁法の適用法条に関して先例・学説等を再整理して把握しており、その点で供述者に対して大きな情報格差が存在する。そして、審査官は供述者に対して逐一質問を行い供述を得るのであるが、その後、供述内容を取捨選択して不必要と考えられる部分を外して調書が作成される。この作成においては通常質問は除かれ供述者が自ら供述した形で整理され、供述調書の最後には任意に供述した旨を記載し、供述人が署名押印する。この供述調書は多くの証拠の中でも最も重要な証拠として扱われる。当該案件について争った場合において、供述人が宣誓証言で供述内容と異なる証言をした場合でも、多くの場合は供述調書が初期の段階で供述され、本人が任意で供述し署名押印しているので十分な任意性があるということで、供述調書が優先して採用される。
問題はこのようにして作成された供述調書が正しく録取されていない可能性があるので、これをいかにして防止するかが重要な問題である

(2)密室での取調べには弁護士の立会いが必要であること
企業の職員にとって通常公取委は怖い存在であり、企業が独禁法違反被疑事件の対象になっている場合に出頭を求められ公取委の密室で2人以上の審査官から違反事実に関して証言を求められることは、一般的にはかなりの精神的な圧迫を受けるのであり、自由な証言のためには弁護士同伴を認めることが必要である。弁護士を同伴しても証言をするのは本人であり、弁護士は必要な場合に助言をすることと審査官の質問が誘導尋問など不正の場合があるとすればそれを指摘するだけであり、適正な審査活動を阻害する行為は排除され、独禁法に詳しい弁護士の助言が行なわれ審査官の質問に的確に答えることができれば、それは審査官側にとっても利益になることである。米国FTCでは弁護士の立会いが認められている(CFR 2,9 条(b)項)。
 誘導尋問は、質問者の違反事実を認めさせようという意図が暗示された質問を行 い、答弁者を質問者の意図に誘導する尋問方法であるが、それは情報格差を不当に利用した質問方法として刑事訴訟法規則では禁止されている(刑訴法規則199条の3の3項)。独禁法違反事件の場合には、質問をする審査官と質問を受ける企業側職員との間には独禁法関係の法律知識について大きな情報格差があるので企業職員はこの誘導尋問の対象になり易いが、弁護士の立会いはこの誘導尋問などの不正な尋問方法の防止に必要である。

(3)誘導尋問の防止策を検討する必要があること

 ①審査官の質問を調書に記載すること
供述には任意供述と正式の尋問による強制的供述があるが、通常は任意供述であり、任意供述の場合には弁護士が同席した方が任意性を確認しやすい。供述の終わりに審査官が関連事実で主張したい点があれば主張するように求められる場合があるが、この場合に同伴者である弁護士の方の助言があれば供述人の関連事実の説明が的確になり、多角的な審査に貢献しやすい。
審査官は、被疑事項について委員会の承認を得ている上に、「暁の襲撃」による立 入検査とそれに続くマスコミの一斉報道により被疑事項についての考えを固め、その後膨大な提出資料との突合せを経て十分な準備により供述を採り供述調書の作成を行うが、この場合質問事項は被疑事項を基盤に十分に検討整理され、供述録取は一問一答の形で行われる。しかし、供述調書は、筋書に適応しないところは取捨選択されて落とされたうえ、質問はできるだけ削除され、供述人が自発的に供述した形にして録取され、かつその文章について供述人は任意に供述して録取されたと記載され、署名押印が行われる。しかし、この調書には審査官の細かい質問は記載されないのが通常である。供述調書の公正性を検証するためには質問事項が詳しく事実に即して記載される必要がある。また、供述の時間も記載される必要がある。
審判においては宣誓証言よりも供述調書の任意性があり、本人は任意に供述したとして署名押印していると判断される場合が多い。

 ②取調べについて録音器による録音を認めること
供述人の供述は、審査官の被疑事項に関する質問に答えた供述であり、しかもそ れは任意性のあるものとして扱われ、企業が争った場合には有力な証拠として利用されるものである。しかし、審査官の質問は委員会の了承をえた被疑事項を基に一定の筋書きが作られ、強力な立入検査権行使とマスコミ報道によって被疑事項は固められており、審査官の綿密な質問は誘導尋問のおそれがあり、しかもこの質疑応答は筋書にしたがって取捨選択される場合が多く、出来上がった供述調書はかなり着色される可能性がある。したがって、任意の供述を応諾した供述人は、任意性・真実性を検証できるために、質疑応答の任意供述の実際の状況を持参の録音機で録音できる権利が認められる必要があると考えられる。これは任意の供述を受諾する弁護士が供述に立ち会うより少ない費用でその機能の一部を代替できることになる。審査官側も録音機でその状況を録音し、供述人の録音の正確性を検証できると同時に、上司に供述聴取の正当性を伝えることができる。この方法は適正な審査活動に寄与することになる。

(4)供述調書の写しを供述人に提供すること
供述調書の写しの入手は供述者と企業にとっては極めて重要である。供述者にとってそれは基本的な権利である。企業側でも違反被疑事件に関係した職員は企業内でも通常ごく僅かであり、この僅かの者の違反被疑事件について正確な供述調書のコピーを会社幹部及び法務部ができるだけ早く入手することは、企業側の防衛対策上必要性が高いし、公取委が証拠として使用する資料の正確な内容をできるだけ早く把握することは本件の問題に対する対応を検討する上で最も重要である。米国及びEUでは手続規則で明記している事項であるので、我が国においても規則に明記することが必要である。米国FTCでは供述調書のほか速記録も提供することが義務づけられ(16CFR 2.9条(a)項)、EUでは弁護士の助言を受ける権利が保障され(「告示」48条)ており、防御権の強化が実態解明機能に支障を生じるというのは疑問である。審査権の行使が一方的に行われる場合にはそれは客観的な実態解明に支障をもたらすが、複雑な経済実態と難解な法律の融合物(公取委「改正法の概要」公取委HP)である違反事件の中立的・客観的な事態解明のためには、むしろ複眼的な視点からの審査が必要であり、企業側の弁護士助言は一方的な不適正な審査を抑制し、複眼的な視点からの審査を助長することで適正な審査機能を阻害するものではない。弁護権の強化は適正な審査にとって必要不可欠である。問題は弁護権が濫用されて適正な審査が妨害される場合であり、この場合の境界線が何であるかを明確にして弁護権そのものではなく、弁護権の濫用を制限できる措置をとることが望ましい。

(5)供述調書に対して供述人の訂正を認めること
任意の供述調書であっても、それは密室で極めて特殊な条件の下で作成されたのであるから、供述書作成後、供述人が冷静に供述内容を関係資料などを参考にして検討し訂正の必要を認めた場合には訂正を認めることが合理的であり、訂正文書は日時を明確にして供述調書に添付することができるようにする必要がある。


7.関連資料・経済資料等から客観的に推認する立証方法を推進すること
独禁法違反事件は、人為的な競争制限行為であり、この行為は需給関係やコストの変動に適応しない人為的な行為であり、通常不自然な値上がりや利潤の不当な増大をもたらすし、競争制限行為の実施者はこの効果を狙って当該行為をおこなうのである。このことは、需要業者などは専門的な取引上の知識により競争制限行為の存在を察知できる場合が多い。したがって、この競争制限行為は、客観的な関連事実や関連経済情報を詳しく分析したり、需要業者など関連事業者から詳しい情報を得るなどの方法により推認することが可能である。ことに、現在では多くの情報は電子情報として残されているので、それを組織的に分析すれば推認は可能である。前述したように、米国・EUを中心に独禁法の運用に関する証拠資料として膨大な電子情報についてそれを委託を受けてキーワードにより整理分析をする事業が急速に発展している。経済的な分析については、既に産業組織論という独禁法に関する応用経済学が発展しそれを用いた経済分析資料が、米国及びEUの法廷では広く利用されている。我が国でも供述調書に頼ることから新しい立証方法に移る必要があると考えられる。

 

 

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