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  • 2015/01/28
  • 独禁政策研究提言
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自由民主党政務調査会 競争政策調査会にて「独占禁止法審査手続についての懇談会報告書」に対する意見書提出・コメント発表しました

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自由民主党 政務調査会 
競争政策調査会  御中
意見聴取手続規則(案)に対する意見

2015年1月28日
競争法研究協会
会長 伊従 寛

公正取引委員会が2014年10月に公表した独占禁止法の意見聴取手続規則(案)について、競争法研究協会は、以下のとおり、意見を述べます。


1. 規則(案)は、改正法の国会審議における政府側説明に基づく手続の基本原則を逸脱している。

(1)平成25年独占禁止法改正法の「意見聴取手続」の趣旨・内容について、国会における政府側(稲田朋美担当国務大臣及び杉本和行公正取引委員会委員長)の説明では、審判制度がなくなり公正取引委員会の行政処分が最終処分となったために、この事前手続である「意見聴取手続」は「デュープロセス」の原則による対審構造の下で証拠に基づき事実認定をする丁寧な手続(「準司法的な事前聴聞手続」)によって行われることとしているが(第185国会経済産業委員会関係議事録)、規則(案)はこの原則を具体的に明記しておらず、政府側答弁に反している。

(2)また、上記政府側説明に基づき平成25年改正法案を議決した国会の付帯決議第3項は「意見聴取手続」を主宰する手続管理官について、手続の透明性、信頼性を確保する観点から、その権限・義務の明確化及びその中立性の確保を求めているが、新規則(案)は、この要請に応えていない。

(3)平成25年改正法は、平成22年に国会に提出された改正法案と実質的に同じ法案であるが、この平成22年改正法案については50名余の独占禁止法学者及び全国消費者団体連絡会が、同法案の「意見聴取手続」が平成19年の内閣府の独占禁止法基本問題懇談会の報告書の準司法的な事前聴聞手続に反することを理由に反対し、その後この法案は国会で審議されることなく平成24年の衆議院解散により廃案になり、かつ政権も変わったのであり、これらの点を考慮すると、平成25年改正法案の上記(1)の新しい政府側説明内容(「準司法的な事前聴聞手続」)を規則で具体的に明記することが極めて重要である。

(4) 独占禁止法に基づく公正取引委員会の行政処分は、企業分割、事業者団体の解散など極めて強力な措置を含み、また違反企業に対する課徴金は数十億円を超える場合があり、この行政処分は企業に対する重大な不利益処分であるので、処分前において処分案について関係企業に争う機会が十分に与えられること(「デュープロセスの原則」:憲法31条)が国民の基本的権利として必要である。

2.規則(案)は、独占禁止法の執行手続の国際標準に合致していない。

(1)独占禁止法は、本来、企業の「営業の自由」を基本原則とし、その弊害が生じた場合に弊害(競争制限効果)の事実を証拠により認定して排除する法律であり、米国・EUでは産業界がこの点から独占禁止法を基本的に支持している。我が国の場合には、戦後政治上の自由主義・民主主義に対応する経済民主化政策の基本法として独占禁止法が制定され上記と同様の考えに基づいている。したがって、独占禁止法の執行手続は、基本的に行政処分を受ける企業に対して十分な保護を与える「準司法的な事前聴聞手続」に基づき規制することがその本質であり、当初から被処分者の防御権は十分に保護されている。また、独占禁止法の執行力強化のためには執行手続の公正性に対する一般の信頼を確保することが不可欠であるとされており(2012年のOECD「手続の公正性と透明性」報告書)、安易な執行力強化は避けるべきである。

(2)1990年代の経済のグローバル化・情報技術の進展等新しい経済実態の下で経済情勢が複雑になるのに伴い、米国の独占禁止法執行手続は、従来から「準司法的な事前聴聞手続」の下で企業の各種弁護権・審査官資料の全面的開示等が保障され、相手方企業に対する執行機関の強制的権限による一方的な審査が抑制されていたことに加えて、相手方企業に対して被疑事実を詳細に開示し、手続当事者間の「対話」に基づく協調的な審査に変わってきており(2009年9月の司法省反トラスト局長の講演)、最近ではリニエンシ―による場合などのほかは広範な電子情報の分析から違反事実を認定している。またEUも従来から「準司法的な事前聴聞手続」と関係企業の防御権及び審査官資料の全面的開示を基本原則としてきていたが、2011年10月に設定した「ベストプラクティス告示」は上記の米国の協調的調査方法を導入して、関係企業に執行機関との密接な意見交換の機会を保障しており、これにより新しい経済情勢に対応した協調的な法執行手続の国際標準が成立しているのであって、我が国の新しい規則においても、国際協調の観点を含めて、この点を重視する必要がある。

(3)現在、世界の政治・経済・社会体制は、重要な変革期に遭遇している。自由主義・民主主義の市場経済大国としての我が国の独占禁止法の執行手続について、米国・EU等の自由主義諸国の独占禁止法執行手続と調和した執行手続を持つことは、現下の極めて重要な課題である。また、現在アジア共同市場の形成が重視されているが、アジア諸国の独占禁止法が公正な手続により執行されることが我が国企業が国際的な事業を円滑に展開できるようにする上でも重要であり、独占禁止法の先進国である我が国の独占禁止法の執行手続の在り方が大きな意味を有している。


3.以上の諸点を考慮すると、本規則(案)が単に法律に規定された「意見聴取手続」を形式的に規定しただけでは独占禁止法の執行手続としては不十分であり、国会における上記政府側答弁の基本原則を明確に規定し、グローバル経済・情報技術革新等の新しい経済実態の下で、関係企業の実質的な防御権を十分に考慮した規定とする必要がある。また、この規則(案)がこのまま最終化される場合には、改正法の下での執行手続を混乱させ、関係企業に重大な不利益を与えるおそれがあるので、改正法の手続規定に遡って、国会政府側答弁の原則に基づき見直す必要がある。

                                      以上

 

 

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